今回は、「どこを聞かせなければならないかを、しっかりつかまえて読んでいく」、あるいは、「キーワードを丁寧に」ということについて考えます。
泉田行夫は、こう解説しています。
日常、人と話をしている場合でも、また、文章を読む場合でも、短いとか長いとかにかかわらず、それぞれ内容が違うんですから、内容によって表現も変化するのが当然です。この「蜘蛛の糸」で言うなら、「ある日のことでございます」というのと、次の、「お釈迦様は極楽の蓮池の淵を一人でぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました」と、この二つは、内容が違いますね。内容をよく知って読みましょう。そして、相手に本を読んで聞かせるというよりも、本の内容を話してやる、こういう表現でありたいと思います。
従って、一つの文章のどこを聞かせなければならないかを、つまり、そのポイントをしっかりとつかまえて読んでいくと、おのづから表現に変化が出てまいります。
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NHKのラジオ講座テキスト「NHKアナウンサーとともに ことば力アップ」に、こんなことが書かれていました。
話してみよう!~自然なイントネーションで~(岩井正・文 p.44~p.47)
ストーリーの展開に不可欠な文と、それを補佐している文を見極めます。これを「幹の文と枝の文」あるいは、「主たる文と従たる文」のような言い方もします。
さらに、それぞれの文の中でも大切な意味の固まりと、それほどでもない固まりに仕分けをします。
あわせて主語と述語の関係、始めて出てくる固有名詞など大切なことば(キーワード)を見つけます。
ニュースを読むときは「自然なイントネーション」が「基本」だと言いました。でも、実際のニュースでは、私たちアナウンサーは、ポイントになるキーワードを意識的に強調して伝えています。さまざまな表現で重要なことばを際立たせ、印象づけているのです。
(黒沢保裕・文 p.88)
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だらだらと音声化するのではなく、キーワードにメリハリをつけて伝えてゆく、ということでしょうか。「あらすじが言えるか?」という解説に接したことがありますが、読もうとする文章を自分なりに把握できているかのチェックになるでしょう。そしてこれはキーワードを見つけるためにはいい方法だと思います。このキーワードのチョイスがまた、同時に「解釈」に関わってくるのでしょう。幸田弘子先生の「朗読は解釈だ」につながります。