「泉田行夫の『蜘蛛の糸』」朗読と解説(12)

 今回は、「はじめは声をださないで内容を掴む」ということについて考えます。

 泉田行夫は、こう解説しています。

 一つの文章のどこを聞かせなければならないかを、つまり、そのポイントをしっかりとつかまえて読んでいくと、おのづから表現に変化が出てまいります。そのためには、まず、声を出さないで、何度も何度も読み返しているうちに、その内容が解ってきますから、どうしても声に出して読みたくなるのを待ってから、読み始めてください。はじめから声に出して読みますと、それが第一印象になって耳に残りますから、間違った掴み方をすることがあるからです。
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 このことについては、このブログでも「朗読するまでの正統な手順」としてすでに述べています。
   「朗読するまでの正統な手順」はこちら

 NHKのラジオ講座テキスト「NHKアナウンサーとともに ことば力アップ」に、こんなことが書かれていました。

 話してみよう!~自然なイントネーションで~(p.44~p.47)

 「黙読」で魅力を発見!
 最初は声を出さずに読み、内容の把握をします。
 何よりも大切なのは作品のすばらしさ、魅力を味わうことです。なぜこんなに惹きつけられるのだろうか?どこが面白いのか?どこに感動するのか?を考えてください。
 朗読では、それを自分の声で伝えることが一番の中心になるのです。
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 「夕鶴」で有名な山本安英先生(幸田弘子先生も大変尊敬しておられました)は、こんなことを語っておられたという記録が残っています。

 詩をうたいあげるというのは あげたり さげたりの調子の変化を心がけるのではなくて、その詩の内容に 自分の共感が結びついたところから それが豊かにふくらんで ひとつのリズムみたいなものが生まれるんじゃないかと思います
 わたし また こんなこともしてみるんです
 いきなり声に出すのではなくって 黙読をすることから始めるんですね
 何度も静かに黙読して、自然に声に出したくなった時に フーっと読みあげてみるんですけれど これは詩の内容に自分の体が入っていくためには大変いい方法とも思えるんです
 ただ まあ その黙読のしかたが 何か 固くなって緊張して字をにらむんではなくて 最初受けた自分の感動を逃がさないように 筋肉なども楽にして 適度な集中で黙読が大切だと思っております
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 内容を掴む、共感する、読みたくなってから読み始める。いかがでしょう。