朗読は教えられない

 幸田先生は、「本当をいえば朗読なんて教えることは何もない。」(「朗読の楽しみ」p.72)とおっしゃいます。「自分でひとつひとつ発見していく、ただそれだけ。」
~ううん、きついですね。
 ただ、「文章がきちんと伝わるような読み方をする」ことがなにより大事だということだそうで、教室では、
 お腹から声を出して
 言葉を立てて
 文章の切れ目では、立て直して
ということは、よく注意されました。これらは、朗読の本来の目的である、明瞭に伝えるための重要なことなのでしょう。逆に
 間をあけて
 もっとゆっくり
 低い声で
などの朗読のテクニックに関する言葉はほとんど、ありませんでした。そういうことは、たくさんの良い朗読を聞いて、自分なりに工夫すべきこと、という意味だったのでしょう。
   ※   ※   ※
 とはいえ、この文章を読んでくださっている方は、きっと、幸田弘子先生のように上手に朗読したいとの思いを持っておられるに違いないので、これから、私なりに、10年間幸田先生の教室に通って発見したことなどを、わたしの父(朗読家・泉田行夫)の残した言葉も織り交ぜて綴ってみたいと思います。