詩の鑑賞(10)「海のそよ風」マラルメ

 幸田弘子先生の朗読された「詩」を鑑賞します。 

 ステファヌ・マラルメの「海のそよ風」です。
 これは、2019年6月27日、目白における会での録音(雑音等処理)です。

 海のそよ風

    ステファヌ・マラルメ

肉体は悲し ああ! すべての書は読まれたり
逃げる! 彼方へ逃げる! 鳥たちのあの陶酔ぶりは
未知なる泡と 大空のあいだにいるからこそ!
何ひとつ 二つの目に映る 二つの古い庭も
海へとほとばしる この心 いかんともしがたく
おお 夜ごと! 白きあまりに筆をもこばむ

このうつろな紙 照らしだす
ろうそくの火の 荒れすさぶ明るさも
子供に乳ふくませる 若い女すらも
行こう かならずや! 帆柱ゆする船
錨をあげよ 異国の遠い光 めざして!

「倦怠」が、むごい希望に苦しみ
いまだに最後の別れ 振られる手旗を信じるとは!
あるいはこのマストすら 嵐をさそい
風のまにまに大波にあそばれ 傾くやも知れず
あてどなく 船は見えず船は見えず、緑の小島も見えぬまま……

しかし おお我が心よ
聞くがいい さまよう船乗りの歌を! 

   ※   ※   ※

 ここからは余談です。

ステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé)

 19世紀フランス象徴派の代表的詩人。

 代表作に『半獣神の午後』『パージュ』『詩集』『骰子一擲』(とうしいってき、『サイコロの一振り』とも)、評論集『ディヴァガシオン』など。

(出典:Wikipedia)