詩の鑑賞(8)「ミラボー橋」アポリネール/堀口大學

 幸田弘子先生の朗読された「詩」を鑑賞します。 

 ギヨーム・アポリネールの「ミラボー橋」です。堀口大學の訳です。
 これは、2019年6月27日、目白における会での録音(雑音等処理)です。

ミラボー橋       

   ギヨーム・アポリネール 堀口大學 訳

ミラボー橋の下をセーヌが流れ
われらの恋が流れる
わたしは思いだす
悩みのあとには楽(たのし)みが来ると

   日も暮れよ 鐘も鳴れ 
   月日は流れ わたしは残る

手と手をつなぎ 顔と顔を向け合おう  
こうしていると
われらのうでの 橋の下を
疲れた無窮の時が流れる

   日も暮れよ 鐘も鳴れ 
   月日は流れ わたしは残る

流れる水のように恋も死んでゆく 
恋もまた死んでゆく
生命(いのち)ばかりが長く
希望ばかりが大きい

   日も暮れよ 鐘も鳴れ 
   月日は流れ わたしは残る

日が去り 月が行き 
過ぎた時も 
昔の恋もふたたびは帰らない
ミラボー橋の下をセーヌが流れる

   日も暮れよ 鐘も鳴れ 
   月日は流れ わたしは残る 

   ※   ※   ※

ここからは余談です。

ミラボー橋 (仏 : Pont Mirabeau)
パリ、セーヌ川に架かる橋。フランス革命初期の中心的指導者オノーレ・ミラボーにちなむ。

アポリネール(Guillaume Apollinaire)
イタリア生まれのポーランド人で、フランスで詩人として活躍した。

詩「ミラボー橋」
この詩はミラボー橋の下のセーヌ川の流れを比ゆ的に表現して、時間の経過に伴う愛の喪失を扱っている、とされている。画家マリー・ローランサンとの恋とその終焉を綴ったといわれている。

アンリ・ルソーが描いた肖像画
アポリネールとローランサンを描いた絵が残っている。