「永遠」ランボー・中原中也

永遠
   アルチュール・ランボー  (中原中也 訳)

また見付かつた。
何が? 永遠が。
去(い)ってしまつた海のことさ
太陽もろとも去(い)ってしまつた。

見張番の魂よ、
白状しようぜ
空無な夜(よ)に就き
燃ゆる日に就き。

人間どもの配慮から、
世間共通(ならし)の逆上(のぼせ)から、
おまへはさつさと手を切つて
飛んでゆくべし……

もとより希望があるものか、
願ひの条(すぢ)があるものか
黙つて黙つて勘忍して……
苦痛なんざあ覚悟の前。

繻子(しゅす)の肌した深紅の燠(おき)よ、
それそのおまへと燃えてゐれあ
義務(つとめ)はすむといふものだ
やれやれといふ暇もなく。

また見付かつた。
何が? 永遠が。
去(い)つてしまつた海のことさ
太陽もろとも去つてしまつた。