幸田弘子先生の朗読された「詩」を鑑賞します。 アルチュール・ランボーの代表作「幸福」です。中原中也の訳です。
これは、2019年6月27日、目白のアプリコットハウスでの公演の録音です。
永遠
アルチュール・ランボー (中原中也 訳)
また見付かった。
何が? 永遠が。
去(い)ってしまった海のことさ
太陽もろとも去(い)ってしまった。
見張番の魂よ、
白状しようぜ
空無な夜(よ)に就き
燃ゆる日に就き。
人間どもの配慮から、
世間共通(ならし)の逆上(のぼせ)から、
おまへはさっさと手を切って
飛んでゆくべし……
もとより希望があるものか、
願ひの条(すぢ)があるものか
黙って黙って勘忍して……
苦痛なんざあ覚悟の前。
繻子(しゅす)の肌した深紅の燠(おき)よ、
それそのおまへと燃えてゐれあ
義務(つとめ)はすむといふものだ
やれやれといふ暇もなく。
また見付かった。
何が? 永遠が。
去(い)ってしまった海のことさ
太陽もろとも去(い)ってしまった。