日本語のアクセントについて(2)

 今回は、朗読における日本語アクセントの研究の続きです。

 前回は、「日本語の一語一語は高低アクセントでできているが、文章になると、前後の関係から、アクセントが弱められることがある」ことを解説しました。
 「蜘蛛の糸」という表題の場合、「もの と」の「」の音が弱められて、「ものいと」となるということですね。
  (今回の説明では、高い音を太字で示しています。)

 もっとも、これが、「血かと思ったら、それは赤い糸でした」という文章なら、「糸」が重要になりますから、「それはあかいとでした」と「糸」が強調されるに違いありません。
微妙ですねえ。

 今回は、「蜘蛛の糸」の冒頭部分についての解説を聞いてみます。

 本文の最初に出てくる、「ある日のことでございます」、これもそうです。アクセントどおりに読むと、「るひの こで ございます」となりますが、これは、「るひ」の「」が高いものですから、「こで」の「」や、「ございます」の「ざいま」のアクセントが弱くなって低く続くために、「るひのことでございます」と、こうなります。これと反対に、「お歩きになっていらっしゃいました」の場合ですと、つけてあるアクセントのとおりに読みますと、「おあるきに って いらっしゃいました」と、なりますが、「って」の「」にアクセントがあるので、まるで、平らに聞こえる「おあるきに」を、高く上げて続きまして、「おあるきになって」、こうなります。その後に続く、いらっしゃいました、は、なっての「」にアクセントがあるものですから、その影響を受けまして、低く続いて、全部を続けると、「おあるきになっていらっしゃいました」と、こうなります。こうした現象は、この朗読の中のいたるところに出てまいりますから、気をつけて聞いておいてください。

   ※   ※   ※

 う~ん、微妙ですねえ。 
 日本語のアクセントについて、専門書・「美しい日本語の発音ーアクセントと表現ー」田代晃二著 創元社」には、次のような説明がなされています。

   ※   ※   ※

続きあがり

 2語以上が一気に言われるとき、先頭語が平板なら後続語のアクセントが生きてなめらかに続く:
 <おはようございます>は、<おはよう ございます>であるが“後続語の語頭が上がって先頭語の2階の高さに並び、あたかも1語のような姿となる<おはようございます>。
 同様に
 <おやすみ ない> ⇒ <おやすみなさい>
 以上は[平板から起伏へ]であるが、[平板どうし]でも同様!
 <まい かおを し い> ⇒ <まるいかおを している
 <決めて おい 行って しまった> ⇒ <決めておいて 行ってしまった

   ※   ※   ※

 日本語の単語の一語一語にアクセントがありますが、文章の中では、なめらかに続けられて、アクセントが弱められることがあるということですね。