「幸福」ランボー・中原中也
幸福
アルチュール・ランボー(中原中也 訳)
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、
無疵(むきず)な魂(もの)なぞ何処にあらう?
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、
私の手がけた幸福の
秘法を誰が脱(のが)れ得よう。
ゴオルの鶏(とり)が鳴くたびに、
「幸福」こそは万歳だ。
もはや何にも希ふまい、
私はそいつで一杯だ。
身も魂も恍惚(とろ)けては、
努力もへちまもあるものか。
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える。
私が何を言つてるのかつて?
言葉なんぞはふつ飛んぢまへだ!
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える!